帝国ホテル京都

京都・祇園の中央に佇む弥栄会館は、1936年に誕生した歴史的建造物であり、現在は帝国ホテルがその再生を担っています。日本を代表する老舗ホテルが文化財の価値を未来へつなぐプロジェクトに取り組んでいる点が特徴的ですね。

この建物は、舞妓や芸姑たちが自ら資金を出し合い、「祇園の文化を育てたい」という想いを形にした場所です。演劇や芸事の舞台として長く地元の人々に親しまれ、祇園の象徴的な存在として役割を果たしてきました。そんな背景を知ると、建物に息づく歴史の厚みが伝わってきます。

2022年に始まった改修工事では、高さ31.5mという外観のプロポーションを守りつつ、内部をホテルとして再構築する作業が進められています。新築よりもはるかに多い労力と時間を注ぎ込み、丁寧に手を加えていく姿勢は、文化財に寄り添う職人仕事そのものです。新たなホテルとしての姿を準備しながら、建物の魂を受け継ぐ取り組みといえるでしょう。

ちなみに2026年3月に帝国ホテル京都としてオープン予定です。



　

星のや奈良監獄

国内外で73施設を展開する星野リゾートが、奈良県の重要文化財・旧奈良監獄を新たなホテルとして再生する計画が大きな注目を集めています。明治期に建てられた赤れんがの建物をそのまま活かしつつ、来年にはラグジュアリーな滞在空間として生まれ変わる予定です。歴史建築を未来に繋ぐ挑戦ですね。

旧奈良監獄は、かつて人々の暮らしを支える矯正施設として機能していましたが、その独特の意匠や構造は今なお強い存在感を放っています。星野リゾートは、この“重厚さ”と“美しさ”を損なわないよう慎重に手を加え、特別な時間を過ごせる場所として再構築しているのです。

さらに、敷地内には「奈良監獄ミュージアム」が併設される予定で、建築の歴史や当時の生活様式について学べる貴重なスポットになる見込みです。宿泊だけでなく、文化に触れる体験も提供されるというのは魅力的ですね。歴史遺産と観光が調和する、新しいランドマークになりそうです。



　

丸福樓

丸福樓は、かつて任天堂の本店として使われていた建物を新たな形で蘇らせたホテルです。任天堂は京都で花札やかるたの製造から歩みを始めた企業で、その歴史を刻んだ場所が現代の宿泊施設として再び息を吹き返したわけですね。

昭和5年に建てられた本店社屋と、創業者が暮らしていた住居部分をほぼそのまま活かしているのが大きな特徴です。当時の空気感を残しながらホテルへと転用することで、訪れる人が“任天堂の原点”に触れられる空間へと仕上がっています。建物に宿る時間の重みが、滞在の深みを増しているのです。

さらに、新たに設けられた新築棟は世界的建築家・安藤忠雄氏が設計監修を担当。歴史建築と現代建築が共存する贅沢な構成になっています。エントランスは当時の面影を色濃く残し、内部には創業期のインテリアを随所に活用。任天堂の歩みを辿れるライブラリーまで整備され、滞在そのものが“企業の物語を旅する体験”となるホテルです。



　

和宿 多葉喜

和宿 多葉喜は、明治25年に建てられた旧料亭建築を未来へ受け継ぐため、昨年あらたに宿として生まれ変わりました。風格ある佇まいをそのまま残しつつ、人が滞在できる空間として丁寧に整え直された一軒です。歴史建築を守りながら活用する姿勢が心地よいですね。

元料亭という背景を活かし、客室からは手入れの行き届いた庭園を眺めることができます。四季の移ろいがそのまま絵のように切り取られ、滞在者だけが味わえる静謐な時間が流れています。庭を眺めながら過ごすひとときは、まさに贅沢そのものです。

また、一棟貸しのスタイルを採用している点も人気の理由のひとつ。ほかの宿泊客に気兼ねなく、自分たちだけの空間として利用できるため、特別な旅行や家族の記念日にも選ばれやすい宿です。歴史を感じながらプライベートな滞在を楽しめるという、唯一無二の魅力を持つ宿といえるでしょう。



　

ゲストハウス醫

大崎下島の御手洗地区に佇むゲストハウス醫は、1913年（大正2年）に建てられた旧診療所を改装した宿泊施設です。歴史ある建物の面影を残しながら、現代の旅人が快適に過ごせる空間へと生まれ変わっています。診療所ならではの佇まいが、そのまま宿の魅力になっているのですね。

特徴的なのは、診療所として設計されていたため窓が多く設けられている点です。室内には自然光がやわらかく差し込み、時間帯によって異なる表情を見せてくれます。日差しに包まれながら過ごすひとときは、まるで島の空気とつながっているような心地よさです。

建物内部には、100年以上前の床板や柱がそのまま活かされており、当時の建築が持つ風合いを感じられるのも人気の理由です。その一方で、水回りや寝具などは丁寧に整えられ、歴史と快適性のバランスがとれた空間に仕上げられています。島の歴史に触れながらゆったり滞在できる宿として、多くの旅人から選ばれているのです。



　

シタディーンなんば大阪

1937年に百貨店として誕生した髙島屋東別館（旧松坂屋大阪店）は、戦前の大阪を象徴する建築のひとつとして長く親しまれてきました。重厚な外観と華やかな内装は当時の面影を色濃く残し、歴史建築としての存在感は今も健在ですね。

この建物はのちに国の重要文化財に指定され、保存と活用の両立が求められる中で、新たな役割を得ることになりました。それが、現在の「シタディーンなんば大阪」としての姿です。歴史を抱く百貨店が、旅人が滞在できるホテルへと生まれ変わったというわけです。建物の歩みが宿泊体験に直結している点が魅力的です。

内部には、当時の意匠を残しつつ現代の居心地の良さを備えた空間が整えられています。歴史的建造物に泊まるという特別感と、アパートメント型ホテルならではの使い勝手の良さが共存するのが人気の理由でしょう。大阪の街を歩いたあと、この文化財で過ごす時間は格別の体験です。宿泊そのものが、建物の歴史と向き合う旅になります。



　

ザ　タワーホテル　ナゴヤ

名古屋のシンボルとして知られる名古屋テレビ塔は、1954年に竣工した日本最古級の電波塔です。この歴史的建造物の内部にホテルが誕生したのが「THE TOWER HOTEL NAGOYA」で、文化財をそのまま宿泊施設として楽しめる特別なスポットとして人気を集めています。塔そのものがホテルになるという発想がユニークですね。

館内には、テレビ塔を支える鉄骨がそのまま通った客室があり、構造体を間近に感じながら泊まれるのが大きな魅力です。一般的なホテルでは味わえない“建築を体験する”滞在ができ、訪れる人の心に強く残る空間になっています。鉄骨の存在感が不思議と落ち着きも生み、まさに文化財ならではの醍醐味です。

また、テレビ塔内に宿泊するという特別感に加え、窓から名古屋の街を見下ろせる眺望も人気を支える要素のひとつ。歴史とデザイン、そして景色が融合したホテルとして、他にはない宿泊体験を提供してくれます。名古屋を訪れるなら、一度は泊まってみたい唯一無二の滞在先といえるでしょう。



　

TOYOOKA1925

兵庫県豊岡市は、日本海に寄り添う風情豊かな街で、城崎温泉をはじめ多くの観光客が足を運ぶ地域です。その中心部に佇む文化財の宿が「TOYOOKA1925」。歴史的建造物を丁寧に活かしたホテルとして知られていますね。

この建物は1934年に建てられた旧兵庫県豊工銀行豊岡支店で、ルネッサンス様式の瀟洒な外観が特徴です。有形文化財に登録されるほど価値ある建築物で、2014年にホテルとして生まれ変わりました。つい最近まで銀行として使用されていたこともあり、当時の姿が随所に残っています。金庫室はそのまま保存され、重厚な扉が歴史を物語っています。

かつて応接室や執務室として使われていた空間は、現在では客室として再構成され、銀行時代の名残とホテルらしい居心地の良さが調和した独特の雰囲気を味わえます。街には1925年の北但大震災からの復興期に建てられた建物が多く並び、周囲を散策するだけで豊岡の歴史を肌で感じられるのも魅力です。過去と現在が静かに重なる宿として、多くの旅人に選ばれています。



　

尾道ゲストハウス あなごのねどこ

尾道ゲストハウス あなごのねどこは、尾道の商店街にそっと紛れるように建つ細長い町家を再生した宿です。明治時代に建てられた建物で、当時の町家ならではの奥へ奥へと続く独特の構造がそのまま魅力となっています。細長い形状がまさに“あなご”のようだと感じられる面白さですね。

この宿は、尾道空き家再生プロジェクトの一環として生まれ変わった物件でもあります。空き家となっていた町家を、壊すのではなく活かす方向へ舵を切り、まちの新しい居場所として再生した取り組みです。尾道の景観や文化を未来に繋ぐ試みとしても価値があります。

内部には昔ながらの木造家屋の風合いが残されつつ、ゲストハウスとして過ごしやすいよう現代的な手入れが施されています。商店街の真ん中に位置しながら、ゆったりと時間が流れるような不思議な空間です。町家の魅力と尾道らしさを同時に味わえる宿として、多くの旅人の心を掴んでいます。



　

尾道ガウディハウス

尾道ガウディハウスは、昭和8年に建てられた別荘をリノベーションし、登録有形文化財として一棟貸しの宿に生まれ変わった建物です。坂の途中にわずか10坪の土地を確保し、石垣を積んで建てられた独特の立地が印象的ですね。

宿の魅力は、昭和初期の台所がほぼ当時のまま残されている点です。食器棚は居間と台所の両方から使えるよう設計され、生活動線の工夫が感じられます。寝室は8畳と建物内で最も広く、ゆったりと過ごせる空間になっており、窓からは尾道の街並みを一望できるのが嬉しいポイントです。

また、寝室と階段の間にある幅40cmほどの細い廊下も当時の設計をそのまま活かしており、建物の歴史や職人の手仕事を肌で感じられます。狭小地に建つ建築の妙と、文化財ならではの趣が融合した宿として、多くの旅人に選ばれているのです。歴史を感じながら尾道の街を眺める贅沢な滞在体験ができる一棟貸し宿ですね。



　

寛ぎの宿 輝雲荘

島根県太田市は、かつて石見銀山で栄えた歴史を持ち、その銀を海へ運ぶ港町としても知られています。その港町の中でひっそりと湯煙を上げる温泉地が温泉津温泉です。夜になると街灯に照らされ、より一層ノスタルジックな景色が広がり、散策するだけでも時間を忘れそうな雰囲気ですね。

そんな温泉津温泉で、文化財級の趣を楽しめる宿として注目されているのが「寛ぎの宿 輝雲荘」です。歴史ある建物を活かしつつ快適に滞在できるよう整えられており、伝統の重みと現代的な居心地の良さを兼ね備えています。

特に人気の理由は、温泉津温泉では唯一の露天風呂を備えている点です。四季折々の景色を眺めながら湯に浸かれる贅沢さは、他の宿では味わえない特別感があります。歴史ある町並みを背景に、文化財の宿で静かに過ごすひとときは、まさに旅の醍醐味といえるでしょう。街の情緒と温泉の心地よさを同時に楽しめる、貴重な宿として多くの旅人に愛されています。



　

花屋徳兵衛

奈良県吉野郡天川村にある洞川温泉は、約1300年前から大峯山への修験道の宿場町として栄えてきた歴史ある温泉地です。夕暮れ時になると、町内に設置された約500個の提灯が灯り、幻想的な雰囲気に包まれるのが魅力ですね。修行者たちが一度に旅館へ上がれるよう縁側が設けられている点も、この地域ならではの建築特徴です。

その中で特におすすめの宿が「宿 花屋徳兵衛」。創業からおよそ500年を誇る老舗旅館で、歴史の重みを感じられる佇まいが人気です。建物の2階からは温泉街の街並みを一望でき、四季折々の景色を楽しめます。冬には雪景色を眺めながら温泉に浸かることもでき、日常では味わえない贅沢な時間を堪能できます。

古い建物の趣と快適な宿泊設備が融合しており、歴史好きや温泉好きの旅人に選ばれている理由のひとつです。洞川温泉の文化や風情を肌で感じながら、温泉にゆったり浸かれる体験は、まさにここならではの特別な滞在といえるでしょう。宿そのものが歴史を伝える存在として、多くの人々に愛され続けています。